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◆被疑者の居場所をGPS携帯の位置情報から割り出す新たな捜査手法について考える

法と常識の狭間で考えよう by 山下幸夫弁護士

ネットワーカー弁護士の独り言より転載します:

http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2011/08/post-e8b4.html

 

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【引用開始】

従来、所在不明の被疑者を逮捕する目的で、被疑者の使用している携帯電話について、携帯電話会社のシステム端末を操作して、その所在位置を探索するために、捜査機関から検証許可状の発付が請求され、裁判官が審査の上、検証許可状を発付し、それを携帯電話会社に呈示し、基地局情報による位置情報が、携帯電話会社から捜査機関に提供されていた。その精度は、都心部では、およそ半径500メートル程度の範囲だと言われている(池田弥生「携帯電話の位置探索のための令状請求」判例タイムズ1097号27頁以下)。

通信については、通信傍受法(盗聴法)による傍受令状が必要となるが、位置情報は通信ではないということで、検証許可状で可能と解されていたのである。

今回、2011年8月1日から、総務省が、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン及び解説の改正案に対する意見募集」をしている(八月末日で募集は終了)。

これは、警察庁が、新たに、GPS(Global Positioning Systemの略語。全地球測位システム)機能付き携帯電話について、GPSによる位置情報を取得するための捜査手法を実現したいと考え、これを法務省と協議したところ、総務省の電気通信事業における個人情報ガイドラインを改正すれば可能であるとの回答をしたことから、同ガイドラインについての改正案を提案し、総務省において、ガイドライン及びその解説の改正案をパブリックコメントに付したものである。

すなわち、総務省は、電気通信事業者における個人情報ガイドライン26条3項に、「当該位置情報が取得されていることを利用者が知ることができるときであって、裁判官の発付した令状に従うときに限り」、位置情報を取得し、それを他人に提供することが許されるとの規定及びその解説を追加しようとしている。

アメリカにおいては、自動車に対して、捜査機関が無断で電波発信機を密かに取り付け、被疑者等の動静を克明に監視するという捜査が行われているが、これに対しては強制処分であるとして令状を要求する裁判例と任意捜査であるとして令状を不要とする裁判例に別れており、連邦最高裁レベルでは決着が付いていないようである。

ただ、2005年、合衆国連邦刑事訴訟規則にGPS装置を含めた追跡監視装置の装着について令状に基づいて実施することを許容する条項を追加するための法改正がなされ、翌2006年12月1日から施行されているという(指宿信「ハイテク機器を利用した追尾監視型捜査-ビデオを監視とGPSモニタリングを例に」鈴木茂嗣先生古稀祝賀論文集・下巻178頁以下)。

そして、指宿教授が指摘するように、「今後、監視=トラッキング技術はますます高度化し顕在化すると予想される。ユビキタス・コンピューティング(どこからでもアクセスできる社会)というのはユビキタス監視社会に繋がることはしばしば指摘されているところである。捜査機関がそうした情報を利用するに当たっては、強制処分と捉えておくことが望ましく、傍受令状の様式に倣い、また、連邦刑事訴訟規則の改正内容に照らして、事後通告型の新たな令状様式がない限り実施することは違法である」と解すべきである(同186頁)。

GPSによる位置情報は、従来の基地局情報による位置情報の精度(半径500メートル)と比較すると、ピンポイントで被疑者が所持する携帯電話の位置を示すものであり、それは公道上の位置だけでなく、被疑者の私有地の中や、被疑者が現に居住する建物の中にいたとしても、その位置情報が克明に明らかになるという点で、個人のプライバシーを暴くものであり、これが継続的な行われれば、電子的な監視になるものであり、狙われた者の行動が全て捜査機関に把握されることになってしまう。

このような新たな捜査権限を捜査機関に与えるのに、単に位置情報を取得して捜査機関に提供する側の電気通信事業者側のガイドラインを変更するだけで可能とするというのでは、捜査機関の濫用に対して何の歯止めにならないことは明らかである。

このような新たな捜査手法を認めるのであれば、刑事訴訟法を改正して、新たな権限(位置情報取得令状とでも言うべき新たな強制処分権限)として規定し、その要件として、被疑事件の重大性、位置探索の日数や回数の制限、補充性、実施後に本人に告知がなされるべきことなどが明確に定められる必要があると言うべきである。

ところが、今回、総務省のガイドラインに対するパブリック・コメント募集を行うだけで、その内容もほとんど説明がなされておらず、マスコミでも全く報道されていないため、このままでは国民がほとんど知らず、何ら意思表示しないままパブリック・コメントが終了し、秋以降にもGPSによる位置探索が開始されるおそれがある。

このような新たな捜査手法を捜査機関に対して認めることについては、私たちは敏感になり、歯止めがない捜査権限の付与に対しては強く反対する必要がある。

【引用終了】

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4件のコメント on 【司法監視:GPS携帯-新たな捜査手法】刑事訴訟法の改定なしにGPS携帯機能の位置確認から被疑者の居場所を割り出す新たな捜査手法→プライバシー侵害を生みだす「国民監視の包囲網」←法権力は国民の全ての行動を知りたがる、他方、公僕である自分達“官僚”のプライバシーは個人情報保護法でブロック=アンタッチャブルとして守りたいという大矛盾を強行する暗い現実

  1. Name より:

    スマホ、アプリで勝手に位置情報収集…米に送信(読売新聞)
    http://www.yomiuri.co.jp/natio.....T00644.htm

  2. Name より:

    取調べ可視化のまやかし(その2)  危険な権限拡大 捜査手法の高度化
    http://www.geocities.jp/shimin.....m#24.03.10

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