シリーズ:『共謀罪のある世界』とは?

【ジャーナリスト、ベテラン放送キャスターらなど報道関係の有志14人が反対声明】

(2017/04/27 1pm)

4月27日(木)午後、参議院議員会館で、「ジャーナリスト・表現者による共謀罪法案(テロ等準備罪)に反対する記者会見」が開かれ、声明文が読み上げられた。

テレビ解説者や討論番組のMC、ネットメディアや放送局キャスター、ジャーナリストや漫画家など、言論表現の最前線で活躍する報道関係有志14人が、4月27日午後、永田町の国会参議院議員会館で記者会見し、国会法務委員会で19日から強行審議入りした「共謀罪」法案(テロ等準備罪)に反対する声明を発表。

参加者は、田原総一朗氏、岸井成格氏、大谷昭宏氏、鳥越俊太郎氏、金平茂紀氏など、政権に批判的な「大御所」ジャーナリストと放送キャスター。加えて、ネットメディアIWJの岩上安身氏、インターネットメディア・ポリタス編集長の津田大介氏、差別や貧困問題に取り組む安田浩一氏、漫画家で保守派の論客・小林よしのり氏。監視問題に取り組む斉藤貴男氏、神保哲生氏、吉岡忍氏も参加した。

声明文(末尾に転載)には、「共謀罪は、内面の自由、プライバシーを踏みにじる道具になり、捜査機関に際限のないフリーハンドが与えられ、監視社会が現実化するおそれがあります。監視のまなざしは人々に内面化されていきます。人々は心を閉ざす方向へと向かいます。何とか自分を守るために。となれば、私たちジャーナリスト、表現者は、取材活動がままならなくなります。私たちの仕事は、真実を知るために多様な考え方の人々の心の内面に入って行くことが常だからです。

結果として、取材し報じられるべきことが伝えられなくなります。つまり、「共謀罪」は、言論の自由表現の自由報道の自由を著しく破壊するものなのです。監視は人間の自由を殺す、とは歴史の教えるところです」と共謀罪の危険性を指摘。

◆ その後、14人の有志が「希代の悪法“共謀罪”」の問題点と、それぞれの懸念を表明した。

「戦争を知る世代のジャーナリスト」として、田原総一朗 氏は、「一般国民に関係ないといいながら、政府批判をする人々を逮捕していったのが治安維持法。そっくりの構図だ」と確信を突く批判。「明日の(4月28日金曜日の深夜から29日明け方まで)“朝生”で、共謀罪をやります。観て下さい」と締めくくった。

IWJ岩上安身氏は、「共謀罪の対象になるのは、メディアや表現活動に関係している人間だけではない。SNSをはじめ、一般の人の日常のコミュニケーションの自由が侵害される」と、共謀罪への危機感を表明した。また、4月24日、エドワード・スノーデン氏が持ち出した機密文書の中に、NSA(アメリカ国家安全保障局)が日本政府に「XKEYSCORE」という通信監視システムを提供したと記載されていることが判明した事案を紹介。アメリカのインターネットメディア「The intercept(インターセプト)」とNHKが報じたスクープと、共謀罪法案との関連性を指摘した。

「サンデーモーニング」のテレビコメンテーターを務めるジャーナリストの岸井成格氏は、「とにかく、声を上げ続ける。まだまだ共謀罪の実相は、一般には知られていない」と危機感を語った。報道番組のキャスター時代、秘密保護法や安保法制を批判する言論が安倍政権によって圧力を受け、降板させられた経緯に触れ、「NEWS23で安保法制を40回取り上げ最後に『メディアは廃案に向けて声を上げるべき!』と、言っちゃったんですね。そうしたら、新聞に全面意見広告が出て、皆が委縮した。」、「高市総務大臣の電波停止発言につながり、放送法4条違反が取り沙汰された結果、その後の選挙では『報道が萎縮し、忖度したため』争点をテレビが扱わなくなった」問題を解説。一連の安保・警察法案に共謀罪が加われば、「日米の軍事一体化」体制の完成だと、懸念を表明。

呼びかけ人の金平茂紀氏は、TBSの「報道特集」キャスターとして、番組で「共謀罪」問題を積極的に取り上げてきた。「平成の治安維持法であり、人間の内面を裁くもの。あの時、マスメディアの人間が何をしていたのかと言われないように、声を上げるのが重要だ」と語った。

フリージャーナリストの安田浩一氏は、「共謀罪ができる世界は別世界。新しい地平線が現れ、今まで積み上げられてきたものを壊す。日常生活に網をかけないと、共謀の立証はできず、一般の人たちが無関係であるはずはない」と、密告監視社会への移行と、警察権力を利する「捜査権限の拡大」を指摘した。

漫画家の小林よしのり氏は、国会の法務委員会参考人に呼ばれ、右翼の立場でもの言うと「国会議員が、なるほどと、よく耳を傾けてくれた」体験を披露し、薬害エイズ事件の経験に触れた。「90%以上の人が、モノ言わぬ市民で一生を終えるが、権力と戦わないといけないモノ言う市民の社会になる時が、(共謀罪によって)来るかもしれない」と発言。「多くの人は自分たちとは関係ないと思っているかもしれないが、そうではない」と、保守の立場から、「廃案に追い込む」決意を語った。

ネットジャーナリストの津田大介氏は、「銃規制があって、犯罪率が低い、治安のいい日本は今、最高に良い(治安)状況なのに、『安全を取りますか?人権を取りますか?』を問う法案をつくる必要はない」。「安全か、人権かの選択を迫り、人権の制限をする意味がない」と、現状との矛盾を指摘。「得るものと、失うもののバランスが問題だ」と語った。

鳥越俊太郎氏は、「安倍政権は戦後最悪の政権!次々と悪法を提出し、数の力で成立させている。こんな改悪は過去になかった!」「小林多喜二は、共産党に献金し、書いたものが不敬罪(出版権の妨害・禁止)に、治安維持法で逮捕され築地警察で拷問を受け、撲殺された」あの時代と、酷似する現状を憂慮した。

作家の吉岡忍氏は、「19条、21条、35条違反だ。令状なしには、捜査されない立憲主義そのものが揺らぐ共謀罪は、憲法違反である」と、明言した。

フリージャーナリストで情報・報道番組コメンテイターの青木理氏は、「日本の警察は30万人、彼らは武器を所持し、全国に情報網を巡らし、強制捜査の絶大な権限を擁する“実力組織”。そこに、特定秘密保護法、通信傍受法、共謀罪という強大な武器を与えてしまえば、恣意的運用で歯止めが効かない権力の濫用を許すことになる。こうやって警察に、次々に武器を与える日本の政治家は、平和ボケして感覚が狂っているんじゃないか」と、問題の核心を浮き彫りにした。「この治安のいい日本で、警察・検察権力が強大化する(共謀罪という)武器を与える愚かさ」を批判した。

(取材メモ・まとめ:山崎淑子 by Sarah Yamasaki)

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【参考情報】

(1)朝日デジタルより:

会見では、メールやLINE(ライン)など日常のコミュニケーションが捜査当局による監視対象となり、一般市民へ影響が及んでいくことへの懸念が繰り返し表明された。(編集委員・豊秀一

http://www.asahi.com/articles/ASK4W546TK4WUTIL03Q.html

(2)会見中継:

「共謀罪は自由な情報発信を殺す」――ジャーナリストら14人が共謀罪に反対する共同声明を発表!岩上安身「密告の横行で個人的な人間関係も破壊される」

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/375780

(3)スノーデン文書の中に日本情報 ネットメディアが公開

(NHK、2017年4月24日)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170424/k10010959721000.html

(4)IWJの解説:

現在審議中の共謀罪法案では、民進党の山尾志桜里衆議院議員の質疑により、メールやLINEであっても「共謀」となり得ることが明らかになっていますが、メールやLINEを入手する方法については(当然ですが)不明でした。しかし、この「XKEYSCORE」という監視システムを日本政府に提供したというスノーデン文書の記述が事実であれば、すでに共謀罪を運用する準備は整っている可能性があります。

(5)報道記事:

ジャーナリストら「共謀罪」めぐり記者会見(全文1)監視社会現実化のおそれ

http://blogos.com/article/220297/

(6)国会審議:

合唱団は犯罪集団か “共謀罪”の国会審議続く(2017/04/22 07:04)

http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000099173.html

(7)「共謀罪」関連記事:

反対集会や声明が次々に 盛り上がる「共謀罪」廃案(成澤宗男)

「現代の治安維持法を廃案にするぞ」――と、自民・公明両党が衆議院で共謀罪法案の審議入りを強行した4月6日夜、東京都内の日比谷野外音楽堂で、同法案に反対する集会が開かれた。これには、約3700人が参加し、会場を埋め尽くした。民主主義の根底を揺るがす悪法の成立阻止を求め、集会後に国会までデモ行進した。

犯罪を実行していないのに、「話し合い」や「相談」の段階で逮捕・処罰できる共謀罪法案は、日本弁護士連合会が3月31日、中本和洋会長名で「監視社会化を招き、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強い本法案の制定に強く反対する」との声明を発表。また、全国52の単位弁護士会のうち、すでに47会(4月3日段階)が同趣旨の反対声明を発表している。

また日本ペンクラブをはじめ日本消費者連盟、日本労働弁護団、日本出版者協議会、日本劇作家協会等の多くの団体からも、法案反対の声が続々あがっている。

この日の集会には、民進、共産、社民、自由、沖縄の風の各党・会派の代表が参加。自由党の山本太郎参院議員は「森友疑惑、加計疑惑を風化させるため、みんなが大きく声をあげる共謀罪法案を早く成立させようとしている」として、安倍晋三政権の打倒を訴えた。

各界からの発言では、「内心の自由に関わる法律は成立後に必ず変質し、市民の弾圧に向けられる」(ノンフィクション作家の吉岡忍氏)、「自民党が説明しているのはウソばかり。『テロ対策』も『オリンピック』も無関係で、法案が必要とされる根拠がない」(高山佳奈子京都大学法科大学院教授)といった、厳しい批判が飛び交った。

安倍内閣は、4月中の衆議院通過を目指しており、同法案の廃案に向けた闘いは短期決戦となりそうだ。4月23日には「共謀の日」として、全国一斉の街頭行動が計画。それを前後し、各地で反対集会が多数開催される。

(成澤宗男・編集部、4月14日号)

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◆27日の記者会見で発表された声明の全文は以下の通り。

【転載】

『私たちは「共謀罪」法案に大反対です』

私たちは、放送やインターネット、執筆活動などを通じて、広義の報道に携わっている者です。私たちは、現在、国会で審議中の「共謀罪」法案に大反対です。「テロなど準備罪」などと言い換えていますが、法案の骨格や内容は、過去3回廃案になった「共謀罪」法案と本質的には何ら変わっていません。

共謀罪」は、まだやっていないことが取り締まりの対象になります。

共謀罪」は、私たちの内面の自由、プライバシーを踏みにじる道具になります。捜査機関に際限のないフリーハンドが与えられ、監視社会が現実化するおそれがあります。監視のまなざしは人々に内面化されていきます。人々は心を閉ざす方向へと向かいます。何とか自分を守るために。となれば、私たちジャーナリスト、表現者は、取材活動がままならなくなります。私たちの仕事は、真実を知るために多様な考え方の人々の心の内面に入って行くことが常だからです。

結果として、取材し報じられるべきことが伝えられなくなります。つまり、「共謀罪」は、言論の自由表現の自由報道の自由を著しく破壊するものなのです。監視は人間の自由を殺す、とは歴史の教えるところです。

この時点で何も言葉を発しないのは、未来に大きな禍根を残すことになると思います。だから、私たちはここで声をあげることにしました。

世界に目を向けると、シリア北朝鮮をめぐる情勢など、「共謀罪」を新設したい勢力には「追い風」が吹いているようにも見えます。強い力に擦り寄っていく人々もメディア上を跋扈(ばっこ)していて、「共謀罪」の本質を隠しているようにも見えます。

共謀罪」はテレビを殺します。「共謀罪」はラジオを殺します。「共謀罪」は自由な情報発信を殺します。人々のコミュニケーションを権力の監視下に置くこの「共謀罪」法案の新設に私たちは、強く、深く、長く、反対します。

2017年4月27日

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【参考記事と関連写真】

http://www.asahi.com/articles/ASK4W546TK4WUTIL03Q.html

Photo: http://www.asahi.com/articles/photo/AS20170427004391.html

(Asahi Shimbun Digital)

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